成年後見を前進させる4つのステップ
(我々の手で成年後見制度を前進させよう!!)
T 成年後見制度は欠陥だらけ
1999年12月に「民法の一部を改正する法律」「任意後見契約に関する法律」等が公布され、2000年4月より成年後見制度が開始されました。この制度の根幹は「自己決定の尊重」と「権利擁護」、「ノーマライゼーション」にあります。障害者を対象とした支援費制度、自立支援制度では当事者の意思を尊重した契約が重視されますが、この契約をする上で注意すべき点は、知的障害等により判断能力が低下した「契約に支援を要する者」に「自己決定=自己責任」論を押付けないことです。そこで、福祉サービス利用者の権利擁護を目的として、成年後見制度が制定されました。
ところが、この制度が欠陥だらけのため、本当なら知的障害の子どもを持つ親としては、自分が亡き後、子どもが安心して生きていけるように、すぐにでも成年後見制度を利用するはずなのに、一向にそういう人が増えないのです。それはこの制度が欠陥だらけだからです。どのような欠陥があるか代表的なものを挙げると
(1)後見人報酬が高い
普通、後見人(家族後見は除き、第三者後見人を指す)は弁護士とか社会福祉士に委託することが多いのですが、その報酬が1万円から3万円といわれています。我々の子どもである知的障害者は障害基礎年金がその収入のほとんどで、就労収入は極めて少ないのが現実です。そして、その障害基礎年金から生活費を支払い、衣服費やたまの娯楽費を支払ったら月々手元に残るお金は1万5千円くらいで、その中から病気等にも備えなければならない。とても後見人報酬を支払うことなど出来ません。
(2)市町村の成年後見制度利用支援事業が充実していない
身寄りのない認知症の高齢者や知的障害者を守るために、「成年後見制度利用支援事業」が市町村に課せられていますが、充実にはほど遠いというのが実情です。
不平不満を並べても、手をこまねいて待っていても解決しない
成年後見制度の不備な点をあれこれ並べる人は沢山います。しかし、そんなことを百万回並べても一向に問題は解決しないし、その内解決するだろうと期待するだけでは、いつになるかさっぱりわからない。だったら、我々の手でこの閉塞状況に風穴を開けようではないかというのが、下記の4つのステップです。
U 第1ステップ 成年後見制度に関する研修会
しかし、今さら「成年後見制度とは何か?」というような研修をするつもりはありません。
なぜなら、千葉知施設連の51支部の内、7割強の支部がそのような勉強会を既に実施したのに、ほとんどのところがそれ以上の進展がありません。
「なぜ、成年後見制度が進まないのか?」・・私たちはこの問題に迫ります
「親亡き後、安心できる法人による第三者後見人をいかに確保するか」・・・これが私たちの目標です。家族が家裁の認定を受けて後見人になることは、さほど難しくないし大きな問題とは考えていません。親亡き後、安心できる第三後見人を確保するためには、法律上の問題、成年後見事業体、行政(市町村)による成年後見制度利用支援事業の活性化といった課題を解決する必要があります。
それらのテーマについて、先進的に取り組んでおられる方の話を聞き、保護者同士でこれからどうするかを議論しようという研修です。また、この研修を行政に役立てていただくため、56の市町村の障害福祉の担当者にも参加いただくよう招待状を出しています。プログラムは下記の通りです。
- 主催 千葉県知的障害者入所施設家族会連合会
- 家庭裁判所は千葉県内を8つのテリトリーに分けていますが、そのテリトリーに合わせて、参加者を8つのグループに別け、グループディスカッションを行います。各グループには成年後見のプロであるNPO千葉県成年後見支援センターのスタッフが参加し議論に加わります。
- 議論のテーマは「知的障害の子を持つ保護者として、今後、成年後見の問題にどう取組んでいくか」、「市町村の担当者とどのように連携していくか」
- 家裁のテリトリーに合わせてグループを編成したのは、家裁によって成年後見の詳細部分に温度差があるからです。また、地区別にグループ編成をしたのは、今後できれば地区別の勉強会などを立上げ、継続してほしいからです。
後援 千葉県
千葉県知的障害者福祉協会
日時 平成20年11月28日(金)午前10時〜午後5時
於 千葉市文化センター(地図参照)
【プログラム】
講演1、「千葉県 障害者の権利擁護のための研究会報告」千葉県障害福祉課 障害者計画推進室長 横山正博講師
千葉県では第四次障害者計画を作成中ですが、その一環で「障害者の権利擁護のための研究会」が設立され議論が重ねられました。その報告を主宰者である室長からしていただきます。
講演2、「成年後見制度の問題点と打開の方向性」 NPO千葉県成年後見支援センター 杉本知則講師
新進気鋭のプロによる実践的な講演です。
講演3、「中間法人を立上げ、成年後見に取組む いすみ学園の報告」いすみ学園職員 社会福祉士 軽込進一講師
いすみ学園では、保護者が社員となる中間法人を立上げ、既に34人の利用者が認定を受けています。
4、「利益相反の問題を乗越え、施設による法人後見の体制を作った三重 あさけ学園の報告」 石丸晃子理事長
施設が利用者の成年後見を受任することは利益相反ということで法律上の禁止事項になっていましたが、弁護士や裁判所との数次の交渉によりこの問題を乗越え、施設による法人後見という体制を作り上げた体験談
(途中 昼食)
グループ討議及び全体討議
セミナーのテキストにも工夫をこらしました。
私たちはセミナーを単発的なその場限りのセミナーで終わらせては拙いと考えています。そのために、テキストに工夫をこらしました。講師の方に前もって講演内容を執筆いただき、講演のテキストにもなるし、その他の場面でも使える汎用性のある小冊子に仕上げました。
成年後見セミナーのテキスト〔内容〕構成
(テキストのタイトル:「親亡き後も障害のある子が安心して生きていけるように」【仮題】)
前書き
1.成年後見制度の概要と問題点・・・・・NPO千葉成年後見支援センター杉本知則氏
(1)成年後見制度の概要
(2)成年後見制度の問題点と打開の方向性
2.障害のある子を持つ親の叫び・・・・・保護者数名
3.後見人に選任されて奮闘中・・・・社会福祉士 北山 静香氏
4.先進事例1
保護者の手で成年後見業務を実践する「NPO成年後見湘南」・・・・比企理事長
5.先進事例2
千葉 いすみ学園の試み・・・・・・・・・社会福祉士 軽込 進一氏
6.先進事例3
三重 あさけ学園の成年後見・・・・・・石丸 晃子理事長
利益相反という問題を乗り越え、施設による法人後見にこぎつけるまでの実践録
7.行政との協働が、継続する成年後見の決め手・・・・・・・・・・熊田 均弁護士
(1)入所施設による法人後見の可能性について
利益相反、権利擁護といった問題を乗越えて施設による法人後見を実現するには、
どのような点に気をつけ、どう準備すべきか
(2)NPOや中間法人による成年後見事業の可能性と問題点
(3)市町村の成年後見利用支援事業の実態と上手な協力の導き方
(注)熊田弁護士は東濃成年後見センターの副理事長やあさけ学園のアドバイザーでもあり、
成年後見に関する法律問題では最強の方です。
8.千葉知施連の願いと目指す活動
9.添付データ等
(1)NPO千葉県成年後見支援センターの組織と連絡先
(2)千葉県内の市町村と障害福祉窓口
V 第2ステップ(行政への働きかけ)
私たちは「成年後見制度は個人の善意や努力に依存するものであってはならない」と考えています。なぜなら、一旦始めた以上、未来永劫に続くものでなければなりません。子どもたちがその人生を全うするのを見届けてもらわないと困るのです。絶対に潰れない、不死不滅の体制を築く必要があります。そのためには、行政に何らかの形で参画してもらうことが欠かせないと思っています。
そのために、セミナー終了後、行政に働きかける計画です。手分けして千葉県下56の市町村の障害福祉の担当者を訪問します。そして、テキストを配布し、協働をアピールします。
W 第3ステップ(市町村会議員とマスコミへの働きかけ)
私たちは、市町村の「成年後見制度利用支援事業」を活性化したいのです。そのためには、市町村の政治を動かす市町村会議員に働きかける必要があります。そのツールとして、セミナーのテキストを活用します。1,320人の議員とマスコミへアプローチします。
X 第4ステップ(地域ごとの勉強会のスタート)
成年後見制度を充実させる活動は長期的なものになると予測されます。粘り強く続ける必要があるでしょう。そのためには、地域ごとに支部のメンバーが集まって勉強会を重ねていくことが望ましいのではないかと考えています。今回のセミナーでは、講演終了後、地域ごとにグループを編成し、グループディスカッションを行います。このグループ編成が地域ごとの勉強会のスタートにつながってほしいと思っています。
グループディスカッションには、地域の実情(特に家庭裁判所の実態)に詳しい千葉県行政書士会が設立した「NPO千葉県成年後見支援センター」のメンバーにも参加してもらいます。後見人になるためには家庭裁判所の認定を受けなければなりませんが、成年後見の内容に関する解釈も家庭裁判所の支部によって温度差があるので、それに詳しい方で且つ成年後見のプロが加われば、ディスカッションも内容のあるものになるでしょう。そのような意味でグループ編成を家庭裁判所のテリトリーごとに編成する予定です。
研修会の申込みは下記PDFファイルをご利用ください。